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11. 知的財産権 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■□■■

 ほかの人が考え出したアイデア、文章、イラストや写真、また、ほかの人の肖像は相応の価値を持つものであり、法律で保護されているので、その権利を侵害しないように取り扱いには充分注意しなければならない。権利を守る法律について学習する。

11-1 知的財産権

 知的財産権(知的所有権)とは、人間の知的な創作活動などから生産されたものに対する権利の総称として使われている。この権利は、著作権法や工業所有権などで保護されている。工業所有権には、特許権(法)、実用新案権(法)、意匠権(法)、商標権(法)がある。
 また、これらの知的財産の創造と保護を推進し、国際競争力の強化を図ることを目的に知的財産基本法が制定された(平成14年)。


11-2 工業所有権

法令名 目   的 存続期間
特 許 法 発明の保護及び利用を図る。 20年間
実用新案法 物品の形状、構造または組合せに係る考案の保護及び利用を図る。 6年間
意 匠 法 意匠(物品の美しさや独自性のあるデザイン)の保護及び利用を図る。 15年間
商 標 法 商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図る。 10年間
更新可

 会社の仕事として行った従業員の発明を「職務発明」といい、それ以外の場合は一般の発明と同じ扱いとして「自由発明」と呼ばれる。職務発明に対して会社は実施料を払うことなく実施できる通常実施権を持っている。また、職務発明の権利を会社に承継した場合、従業員はそれに対する対価の支払いを受ける権利がある。


11-3 著作権

 著作権法 第1条 … 「著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。」

(1) 著作権と特許権
 著作権と特許権の違い

著作権 特許権
・創作的に表現されたものを保護する。 ・発明、すなわち技術的な思想(方法やアイデア)を保護する。
・登録などの手続きをしなくても、著作物を創作した時点で権利が発生する。 ・特許庁へ出願し、審査後に登録をして初めて・特許庁へ出願し、審査後に登録をして初めて権利が発生する。

 コンピュータのプログラムやデータベースも基本的には、小説や音楽などの著作物と同じように著作権法で著作者の利益が保護されている。
 プログラムは、著作権法以外にユーザと著作者の間で締結される使用許諾契約などによっても保護されている。
 データベースは、その情報の選択又は体系的な構成に創作性のあるものが著作物として保護される。

著作権法上の用語
・プログラム … 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。(著作権法第2条第1項第10号の2)
・データベース … 論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。(著作権法第2条第1項第10号の3)
・著作物 … 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。(著作権法第2条第1項第1号)
・著作者 … 著作物を創作する者をいう。(著作権法第2条第1項第2号)


(2) 著作者の権利

 著作者人格権 … 著作者の人格的利益を保護する権利である。

① 公表権
(著作権法第18条)
 未公表の自分の著作物を公衆に提供したり提示するかしないかを決める権利
② 氏名表示権
(著作権法第19条)
 著作物を公表するときに著作者名を実名や変名で表示するかしないかを決める権利
③ 同一性保持権
(著作権法第20条)
自分の著作物の内容や題名を自分の意に反して改変されない権利

 著作権に含まれる権利(主なもの) …  著作者の経済的利益を保護する権利(財産権)である。

① 複製権
(著作権法第21条)
 著作物を複製(コピー)する権利
② 放送権
(著作権法第23条)
 著作物を放送したり有線送信する権利
③ 貸与権
(著作権法第26条の2)
 著作物の複製物を貸与する権利
④ 翻案(ホンアン)権
(著作権法第27条)
 著作物を翻訳、編曲やその他翻案する権利
 その他翻案とは、既存の著作物を元にそこに新たな創作的行為を加えること。ソフトウェアのバージョンアップなども該当する。


(3) 著作権の有効期間

 著作権法上の権利には原則として一定の期間が決められており、これを保護期間という。この期間の終了後は、その権利が消滅する。
 原則として、著作者が著作物を創作したときから始まり、著作者の生存中とその死後50年間を保護期間とする(著作権法第51条)。ただし、無名・変名の著作物、団体名義の著作物については、公表後50年間、映画の著作物については、公表後70年間を保護期間とする(著作権法第52~54条)。
 保護期間の計算は、著作者が死亡した日または著作物が公表された日のそれぞれ属する年の翌年の1月1日から起算する(著作権法第57条)。

例 「羅生門」や「鼻」などの著者である芥川龍之介(1892年3月1日~1927年7月24日)の国内での保護期間が終了し、著作権が消滅するのはいつからか。
答 没年が1927年7月24日であるので、翌年の1928年1月1日から起算する。
  1928 + 50 - 1 = 1977    1977年12月31日までが保護期間となる。
したがって、著作権が消滅するのは、1978年1月1日からである。


(4) 著作隣接権

 著作物の創作者ではないが、著作物の伝達に重要な役割を果たしている実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利である(著作権法第91-100条)。
 保護期間は、最初に実演(録音、放送)した日の属する年の翌年から起算して50年間とする(著作権法第101条)。

例 作曲家ベートーベン(1770-1827)の作品の著作権は国内ではすでに消滅していると考えられるが、指揮者A氏(1902-1980)が1960年7月1日に演奏し、録音した物の国内での保護期間が終了し、著作権が消滅するのはいつからか。
答 著作隣接権は実演日の翌年から起算される。この場合、1961年1月1日からとなる。
  1961 + 50 - 1 = 2010    2010年12月31日までが保護期間となる。
したがって、著作権が消滅するのは、2011年1月1日からである。


(5) 外国の著作物

 著作物は、世界各国で流通するため、条約で互いの著作権などを保護している。


(6) 著作物の複製

 一定の場合に限って著作権者の許諾を得ることなく著作物を利用することができる。ただし、著作権者の利益を不当に害さないように、また、著作物の通常の利用が妨げられることのないよう、条件は厳密に順守しなければならない(拡大解釈してはならない)。


(7) 使用条件

 著作権法だけでは十分に保護されない面をカバーするために、ソフトウェアの多くの場合に著作権者と使用者の間で使用許諾契約を締結し、使用について条件を決めることが多い。


(8) 肖像権

 肖像権とは、肖像(人の姿・形及びその画像など)が持っている人権のことで、人格権と財産権に分けられる。

人格権  被写体としての権利で、その被写体自身または所有者の許可なく撮影、描写、公開されない権利である。
財産権  有名な人物などの肖像が生む財産的価値を保護する権利である。


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