知的財産権
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2-3 著作隣接権

 著作物の創作者ではないが、著作物の伝達に重要な役割を果たしている実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利である(著作権法第91-100条)
 保護期間は、最初に実演(録音、放送)した日の属する年の翌年から起算して50年間とする(著作権法第101条)

 作曲家ベートーベン(1770~1827)の作品の著作権は国内ではすでに消滅していると考えられるが、指揮者A氏(1902~1980)が1960年7月1日に演奏し、録音した物の国内での保護期間が終了し、著作権が消滅するのはいつからか。
 著作隣接権は実演日の翌年から起算される。この場合、1961年1月1日からとなる。
 1961 + 50 - 1 = 2010  ・・・>  2010年12月31日までが保護期間となる。
 したがって、著作権が消滅するのは、2011年1月1日からである。


2-4 外国の著作物

 著作物は、世界各国で流通するため、条約で互いの著作権などを保護している。

  1. 文学的及び美術的著作作物の保護に関するベルヌ条約(ベルヌ条約)
     著作権に関する基本的な条約である。他の締結国の国民の著作物及び締結国で最初に発行された著作物を保護する義務がある。
  2. 万国著作権条約
     ベルヌ条約同様に他の締結国の国民の著作物等を保護する義務がある。他国においては、著作権取得のために一定の手続きを必要とする国もあるが、著作物の複製物に
      ① ©または(C)の記号   ② 著作権者名   ③ 最初の発行年
    を表示すれば、保護を受けることができると定められている。
  3. 実演家レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約(実演家等保護条約または、ローマ条約)
     隣接権に関する国際条約である。
  4. 許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約(レコード保護条約)
     レコードの違法複製の防止を目的とした条約である。


2-5 著作物の複製

 一定の場合に限って著作権者の許諾(きょだく)を得ることなく著作物を利用することができる。ただし、著作権者の利益を不当に害さないように、また、著作物の通常の利用が妨げられることのないよう、条件は厳密に順守しなければならない(拡大解釈してはならない)。

  1. 私的利用のための複製(著作権法第30・43条)
     私的使用(個人的にまたは、家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること)を目的とする場合は、著作物を複製、翻案等することができる。
  2. プログラムの複製(著作権法第47条の2)
     プログラムの著作物の複製物の所有者は、自分のコンピュータで使用するために必要と認められる限度内で複製、翻案することができる。
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